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前回、CSR(企業の社会的責任)と「こころ」の関係について簡単にお話ししましたが、この人間の「こころ」に相当するのが、企業の理念となります。ただ、企業も人間と同様に成長するものですので、創業から時間をへるにしたがって、企業理念も成長すると考えられます。ただ、このような理念の成長プロセスで最も大事なのは、創業時の起業の理念だと思います。前回にも紹介しましたが、創業動機の上位に「社会に貢献したい」があるように、社会的使命としての徳性が明確だからです。成長しながらも、その企業理念の幹になる部分が創業時の起業理念だと考えられます。
戦前から戦後にかけて、創業した経営の神様と呼ばれる方々に、共通しているのは、創業時に社会に貢献するという視点に基づく明確な理念を持っている点にあります。株式市場に上場した後も長期的に安定した成長を達成していることもみのがせない事実です。また、現代のMBAのような経営理論体系がない時代だったことも興味深いところです。このような理論体系よりも、「社会に良いことをしたい」という「こころ」ないし「志」が経営の神様の理念に共通しているのです。事業の経営というのは堅苦しく言えば、ヒト、モノ、材料、時間といった経営資源を効率的に運営することと言えますが、これは、かなり頭のよさ(IQ)に左右される部分であると言われます。それに対して、それを司る「こころ」の部分が理念ないし徳性であると言われます。企業の不祥事は、「不徳のいたすところ」を、まさに体言していることになります。
戦前から戦後にかけて、ソニーの前身である、東京通信工業を創業した井深大氏は教育論でも有名ですが、同氏の教育理論で、3歳までに徳育が必要不可欠であるという考え方があります。体育(体力養成)、知育(知識の確保)は年齢を経てからでもできるが、徳育は年少時に身につける必要があるという考え方です。会社のライフサイクルで言えば、まさに創業時に相当します。井深理論を企業にあてはめると、創業時の徳育ないし徳性が重要であるということになります。経営体力や経営知識も大切ながら、企業理念の基礎は創業者の徳性に依存すると言えそうです。社会にどのような良いことをしたいのか、社会貢献という明確な理念が企業の長期的成長の鍵の一つと言えそうです。 |